Bill Evans『Waltz For Debby』レビュー

Bill Evans『Waltz For Debby』レビュー
この記事はだいたい 5 分前後で読めます。

Bill Evansのピアノは好きで『You Must Believe in Spring』のアルバムから聴き始めました。他には『I Will Say Goodbye』『Half Moon Bay』と聴いて行きましたが有名すぎるため『Waltz For Debby』は避けていたかもしれません。

最初の頃に聴きましたがあまり感動がなかったと記憶しています。しかし、ディスコグラフィを調べてみると、Bill Evansは大きく1960年代と1970年代とに分けてリリース・アルバムを検証する必要があると考えました。音楽の傾向に顕著な変化があるからです。もちろんBill Evans TRIOでのリリースとBill Evans単独でのリリースの違いも影響しているのかもしれません。

1960年代は試験的なまだ模索しているようなピアノのフレーズがありました。悲しさが感じられるようなトーンやフレーズはなかったと思います。しかし1970年代に入ってくると音が細く突き刺さるようなそしてどことなく重い感じのトーンへと変化しています。アルバム全体で空虚感を感じるものもあります。

私が聴いていたのは1970年代リリースのものに偏ってもいました。1961年録音のこのアルバムはエバンスの代名詞的なアルバムでもあり私も今では一番好きなアルバムになりました。

ベースのスコット・ラファロ参加の最後のアルバムで、まるでピアノと共演しているかのようなベースです。ビートルズでいう『サムシング』のジョージのギターとポールのベースの関係に近いかもしれません。そこにポール・モチアンのドラムが絡んできて見事なトリオになっています。自己主張の強い演奏でもなければ、エバンスのためだけの演奏でもないところがこのアルバムの凄いところでしょう。

ジャズ・ベーシストにCharles Mingusがいますが、スコット・ラファロのベースの方が繊細さと大胆さと丁寧さがあって好きです。私は終わりの方でこのアルバムを購入しましたが、入門アルバムに最適です。

私が購入した3種類のアルバム、SHM-CD、UHQCD、XRCDの比較感想を伝えたいと思います。

Waltz For Debby(完全版SHM-CD)

ライブ盤として実感できる内容で、「Gloria’s Step」演奏中に起こった途中の停電で途切れる場面や臨場感は他のバージョンでは味わえないです。完全版なだけあって曲数が一番多く3枚組でこのアルバムだけに収録されている『オール・オブ・ユー』は聴きごたえがあります。

音質的には拘りがなければいい音に聴こえるでしょう。しかしイマイチ、エッジに欠けていて透明感も不足しています。貴重な音源でもありますので是非全て聴いてみましょう。

Waltz For Debby(UHQCD)

3枚の中で最も躍動感のない物静かな音に仕上がっています。曲数も6曲のみとなっています。UHQCDでリリースする場合は最新のリマスターを行っています。透明感はSHM-CDより向上していますが、ピアノ、ベース、ドラムとエッジのない音になっています。

グッと迫ってくる音を求めている人には物足りなさを感じてしまうでしょう。

ワルツ・フォー・デビィ+4 [XRCD]

音質的にはこのXRCD盤が最強。透明感と各楽器のエッジ、一歩前で演奏しているかのようなリアリティはこのアルバムでしか聴けません。音は太く迫力があります。

XRCDはオリジナルのアナログマスターテープの音源を使用しています。その他高音質化のためのプロセス管理をしっかり行っているため透明感の向上につながっていると考えられます。中古でしか手に入りませんが興味のある方は是非聴いてみてください。音質の良さに驚くことでしょう。

この記事を書いた人

ogoe 男性

福島県南相馬市原町区から上京してきて30年以上経ちます。仕事は、財務経理が20年以上、不動産関係が10年以上経験があります。趣味は音楽と写真。過去の曲でなかなか聴く機会のないアルバムを若い世代に紹介していきたいと思ってます。

TOPへ