Jeff Beck『Blow by Blow』レビュー

Jeff Beck『Blow by Blow』レビュー
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ジェフ・ベックの代表作であるこの『Blow by Blow』については、名盤であることに異存はないですが、私が最初に聴いた1994年当時は一度聴いただけでつまらなく感じて聴かなくなりました。通常盤でありながらも元々録音が良いアルバムだったのと、全曲インストゥルメントであることからリマスターの必然性を感じなかったからです。

しかしこのmobil fidelityゴールドCD盤を聴いてから考えが変わりました。音に粘りがあるように感じました。くどいというわけではありません。だからこそジェフ・ベックがレスポールを弾いて録音した最後のアルバムにふさわしい音なのです。

各楽器の音が全面的に前に出ています。そしてリアルさとマイルドさが同居して表現力が増した演奏として聴くことができます。音質的にはインストゥルメントにありがちな平面的で退屈なサウンドではなく、表現豊かなものでインストゥルメントが嫌いな人でも満足してもらえる音質です。

私としてはこのアルバムで唯一受け入れられないのは、ベックが好きで良くライブでも使用している『トーキング・モジュレーター』の音です。何かしゃべっているようなサウンドを作る機材です。このアルバムでは『She’s a Woman』で使用しています。ビートルズのカバーをするのはいいですが、やっぱり気持ち悪いです。

プロデューサーにジョージ・マーティンを起用していますが次作の『Wired』でも起用しています。ともにベックにとっての代表作になっただけでなくその後の音楽の方向性が明確になった時期でもあります。ジャズとロックのフュージョンが彼の求めるサウンドになったのだと思います。

ジョージ・マーティンはピアノが上手く、あるゆるジャンルの音楽に精通していたこともベックにとっては都合が良かったことでしょう。彼が表現したいことを上手く譜面で示すことができる人です。

このアルバムの最大の目玉はスティーヴィー・ワンダーの『Cause We’ve Ended as Lovers』のカバーでしょう。ギターとキーボードの音が芸術的に融合していてとても感動してしまいます。意外に注目されていませんが、ラストナンバーの『Diamond Dust』も名曲だと思います。オーケストラをバックにベックはギターをとてもエモーショナルに弾いています。

ベック,ボガード、アピスのハード・ロック路線が自分の求めるサウンドではないと思い、ソロ活動に舵を切ったのは正解だったと思います。アーティストとして自己のスタイルを確立することがどんなに困難なことか、ベックを見ていると分かります。早くに確立したクラプトンやペイジは凄いです。

このアルバムは秋の夜長に聴くのが一番合っているでしょう。

特筆すべき点
  1. ジェフ・ベックにとってのソロアルバム第一弾であること
  2. プロデューサーにビートルズの元プロデューサーの『ジョージ・マーティン』を起用していること
  3. ギブソン・レスポールを使用した最後のスタジオ録音であること
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この記事を書いた人

ogoe 男性

福島県南相馬市原町区から上京してきて30年以上経ちます。仕事は、財務経理が20年以上、不動産関係が10年以上経験があります。趣味は音楽と写真。過去の曲でなかなか聴く機会のないアルバムを若い世代に紹介していきたいと思ってます。

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